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会社の決算が黒字の場合節税対策として家賃を1年分前払いすることがありますね。

しかし、このような対策が本当に有効でしょうか。

2つの観点から検討してみましょう。

税務上のポイント

前払費用が税務上「短期前払費用」として損金に算入されるためには、難しい言葉ですがその受けるサービスが「等質等量」でなければなりません。

わかりやすく言えば受けるサービスが、毎月同じ内容で同じ分量(程度)でなければならないということです。なので、家賃の支払いすなわち事務所や工場等を借りるということは毎月同じサービスを受けていることになりますから「等質等量」になるので1年分の前払費用は損金に算入することはできます。

これが会計士や弁護士等への顧問報酬でしたら毎月受けるサービスが「等質等量」にはなりませんのでいくら前払いしてもその部分は基本的に損金にはなりません。

まずこの部分をよく確認しておいてください。

次に、前払い家賃は短期前払費用だからいくらでも損金にできるかというとそうではありません。
過去に当期利益に対するバランスが異常だったとして否認されたケースもあるようです。

この部分は明確な基準はありませんのであくまでも常識の範囲としかお伝えできませんが、明らかに露骨な税金逃れと判断されれば税務調査で問題になるでしょう。

経営上のポイント

「どうせ来年に支払う家賃だから今期中に支払い今期の費用にしましょう。」程度の安易な説明だけを受けて家賃の支払い方法を変えている方もおられることでしょう。

家賃を年払いで前払いするということはお金は先に出ていきます。例えば1年分の家賃が100だったとします。家賃を普通に月払いで払っていれば(年払いでかつ前払いはないので)期末には100の現金が残ります。しかし、前払いすればこの100のお金が会社から出ていきます。これは法人税法上損金になりますので支払う法人税は前払いしなかったときに比べ少なくなりますが、法人税や住民税合わせての税率が30%程度ですので、節税額は30です。

すると前払い額が100なのに節税額が30ですから差引70は会社からお金が出た状態です。この70という会社から先に出て行ったお金はいつ取り戻せるのでしょうか。

来年ですか?、3年先ですか?。普通はこの前払いの状態が将来にわたって継続すると考えられます。
そうなると将来会社が事務所(工場)を今の場所から移転するときまで取り戻せません。言い換えれば会社や工場が移転しなければ永遠に取り戻せないのです。

また、家賃の支払い方法を年払いで前払いから月払いに戻せば70のお金は取り戻せますが、そのようなことを考えるのはおそらく会社の業況が悪くなったときでしょう。

その時に「資金繰りが厳しくなったので家賃の支払い方法を月払いに変更してほしい」と家主にお願いしても、家主は今まで年払いで先にお金をもらえたのに、月払いに変更することを了承するかどうかわかりませんよね。

つまり、家賃の支払い方法を1年分前払いするということは、将来業績が落ち込んで資金繰りが厳しくなっても継続して前払いし続けなければならないというリスクを負うことになるのです。

家賃の前払いという節税対策はこのような大きなリスクを抱えたものです。安易に変更すべきものではないということをお分かりいただけたでしょうか。

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しかし、将来のリスクも理解したうえで家賃の支払い方法を変更するのであれば、それは立派な経営判断です。その場合は、この節税対策は有効なものになるでしょう。